Research
【はじめに】
お互いに強く相互作用し合う粒子から成る系を「強相関系」と呼びます。ある種の固体中における電子はこの「強相関系」の一例で、お互いの間に働く強いクーロン反発力によって邪魔し合う結果、通常の金属中における電子のように自由には動き回れなくなったり、時には完全に局在したりします。このような状況では、電子が普段見せない多彩な「顔」が全く予想もつかない形でマクロなモノの性質に現れることがあります。
当研究室では、「強相関電子系」が示すふしぎな性質に関する実験的な研究を行っています。純粋に物理としての面白さを追求するとともに、強相関物理工学といった応用分野を視野に入れて、基礎学理の確立も目指しています。また、カゴメ格子や三角格子などの幾何学的フラストレーションを有する物質系での特異な物性の発現を目指して、新規物質の探索を行っています。
原子の周期的な配列によって特徴付けられる結晶固体では、その構成要素である電子の秩序化に加えて、軌道秩序や電荷ストライプ秩序、磁気秩序のようなスピン自由度や電荷自由度に起因した高次構造が形成されます。最近、らせん磁性体や強相関電子系物質において、非自明な高次構造(スピンテクスチャ構造、超構造、ドメイン構造)の形成が見出され、電気磁気効果などの特異な複合物性の起因であると考えられています。マルチフェロイック物質やらせん磁性体、強相関電子系物質を研究対象として、複合自由度(スピン・軌道・電荷)が競合や協調することにより発現する特異な物性発現とそのメカニズムについて研究をすすめています。
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YCr6Ga0.6Ge5.4 単結晶と高分解能原子像 |
【新物質合成】
私たちの身の周りにある物質・材料は、周期表の中にある100個程度の元素の組み合わせから出来ていますが、私たちが経験する物質・材料は非常に様々な性質を示します。未知の機能を持った物質・材料の設計・合成を行うことによって、物質・材料に潜む普遍的な物理法則を探求し、世の中で役に立つ物質・材料の創製を目指しています。
【機能性開拓】
熱電特性、電気特性、磁気特性、誘電特性などの機能特性を2K~800Kの温度範囲で測定し、新規な機能性発現やその発現メカニズム解明に取り組んでいます。
【構造解析】
原子レベルの空間分解能を持つ透過型電子顕微鏡やローレンツ電子顕微鏡を用いて、物質内部に存在する不均質構造やナノスケールでのテクスチャ構造(分域構造、磁区構造、磁壁構造・欠陥構造・トポロジカル欠陥)およびその外場(温度・磁場等)応答や構造変化を明らかにすることにより、機能発現のメカニズムについて調べています。また、放射光回折実験(SPring8)を行い、熱振動因子や原子位置の決定など結晶構造の精密構造解析にも取り組んでいます。
具体的には下記のような研究を行っております。
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酸素四面体構造を有する酸化物 |
全固体電池材料 |
磁性体材料 |
新しい磁気イメージング法の開発 |
ドメイン境界が創り出す機能性 |
研究テーマ紹介 |