磁性体材料

 トランスやモーターの鉄心に使われる磁性体は、電流によって発生する磁界の影響を受けて直ちに大きな磁束密度を得るような磁性体でなければなりません。このためには、磁力を保持する力(保持力)が小さく、透磁率が大きいという特性が求められ、このような特性をもつ材料のことを軟磁性材料といいます。軟磁性材料は鉄損が小さい材料ですが、これらの鉄損をさらに小さくすれば、日常的に利用される大量の鉄心に対し省エネルギーを実現できるため、これらの高性能化が強く求められています。現在実用化されている軟磁性材料としてFe-Si-Bアモルファス合金が挙げられます。先行研究により、この合金にPとCuを添加し熱処理を施すことで、保持力が小さくなることが分かっています。また、図1に示すように、アモルファス合金を熱処理して得られるナノ結晶合金がよりよい磁気特性を示すことも分かっており、微細構造と磁気特性の相関関係の解明が重要であります。


    図1. 比透磁率と飽和磁束密度の関係

 そこで本研究ではFe-Si-B-P-Cuアモルファス合金に着目し、この合金を熱処理によりナノ結晶化させたものを、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察しています。例えば、電子回折強度の定量的評価を行うとともにEDX組成分析法を行うことで、析出相の同定や分布について知ることができます。また、ローレンツ電子顕微鏡法を用いて、図2のように磁区構造の観察なども行っており、熱処理を施すことで磁区構造の微細化が観察されました。本研究では、さらに微細構造の解析を進めることで、軟磁性材料の結晶化過程における微細構造と磁気特性の相関関係の解明を目指しています。

   図2. (Fe76Si9B10P599.5Cu0.5のフレネル像(左:熱処理前、右:熱処理後)