ドメイン境界が創り出す機能性

 強誘電体や強磁性体、強弾性体などの強的秩序を有する物質において、秩序変数の向きが揃った領域をドメイン(分域)といい、隣接ドメインの境界のことをドメイン境界といいます。近年、このドメイン境界において、磁性、誘電性や超伝導特性などバルク構造と異なる特異な機能性が発現することが報告され、ドメイン境界に特有な結晶構造や機能性の発現に関する研究が盛んにおこなわれています。そこで本研究では、フェロイック物質の有するドメイン境界(界面)で見られる特有な機能性について着目し、機能性界面を持つ物質の探索やその機能性の起源を解明することを目指しています。実験手法は主に透過型電子顕微鏡による構造解析による研究を行っています。

 これまで我々の研究グループでは、六方晶強誘電体であるRMnO3(Rは希土類元素)及びMnサイトの一部をTiで置換したRMn1-xTixO3についての研究を行ってきました。図1にHoMn1-xTixO3(x = 0.3)の電子回折図形と10スポットを結像して取得した暗視野像を示します。電子回折図形からは六方晶P63cm構造と三方晶R3c構造由来の回折スポットが確認され2相共存状態にあることが示唆されました。また暗視野像からは両構造の2相共存状態が確認され、R3c構造によるドメイン構造の境界でP63cm構造が存在することがわかりました。

 さらにHAADF-STEM像観察の結果からはP63cm構造では、[001]軸方向に分極が生じている可能性が示唆されました。これらのことから、HoMn1-xTixO3(x = 0.3)は局所領域において特有なドメイン構造を有することを発見し、またドメイン境界において極性を持つことを明らかにしました。このような機能性を有するドメイン境界は高密度化することで新規高密度記録媒体への応用が期待されています。今後は、本物質系のみならず様々な物質系で見られるドメイン境界における機能性についての研究を行う予定です。

図1. HoMn1-xTixO3(x = 0.3)の電子回折図形と10スポットを結像して取得した暗視野像